(雑誌 「治療」Vol.89,3月増刊号 p1230〜南山堂)
食用キノコに関する疫学研究は少ないが、1972年から86年まで15年にわたって、長野県北信総合病院がエノキタケ生産農家の癌死亡率を調査した。
そしてキノコ生産農家の発癌率が長野県全体に比較し有意に低いという結果を出した。
その総調査年人数は174,505であり、長野県全体の癌死亡率は10万人当たり160.6であったが、エノキタケ生産農家のそれは、97.1であった(図2)10)。
5年毎の変化など図2に示した通りで、この研究は地域相関研究であるので、さらに食用きのこの摂取と癌罹患率に関して、詳しく解明する必要があるということになり、国立がんセンター研究所臨床疫学部と長野県農村工業研究所が中心となり、県農協厚生連傘下の病院の参加を得て、1998年から5年間をかけ、ケース・コントロール研究を行った。
この研究は国立がんセンターを中心にして現在も行われている「多目的コーホートによるがん・循環器疾患の疫学研究」に準じて行われた。
本研究における、胃がんの症例数は153で、それに対して対照症例数は303人であり、大腸がんの場合は症例数121に対して、対照群は245例であった。
またそれぞれの対象者には、この研究への同意を得て行われた。
厚生連の病院であるので、一般に都会の人と比べると、野菜、果物を多く摂取している。またキノコを食べる量は一般的には野菜、果物を食べる量に比べて量的に少ない。
そしてこの研究結果では、胃がんでは、野菜全体,高カロテン含有野菜、低カロテン含有野菜、キノコ、いずれにおいても統計的に有意なリスクの減少があるという結果は認められなかった。
しかし図3に示したように、胃がんでは、ブナシメジ,ナメコで殆ど食べていない人が胃がんになる確率を1.0としたときに、週1回以上食べる人が胃がんになる確率は0.56〜0.57に低減していた。
またエノキタケでは週1回未満しか食べない人を1.0とした場合、週3回以上食べている人が胃がんになる確率は、0.66まで低減していた。なおこの場合シイタケでは0.95であった11)。
またキノコに関して大腸がんでは明らかな関連が認められなかったが、現在大腸がんを確かに予防するという食物は報告されていない。
食物繊維の場合、食べていない場合とある程度多く食べている場合とでは差があるという結果もあるので、食物繊維の多いキノコもそういう期待はもてると考えられる。

