(雑誌 「治療」Vol.89,3月増刊号 p1230〜南山堂)
これまでの我々のキノコに関する研究結果に基づいて、EEMR(Extracts of Edible Mushrooms、エノキタケ、ブナシメジの抽出製品)が開発されており、その臨床研究について研究した。
進行がん患者は、一般にカへキシー(悪液質)の状態になるが、こういう場合にステロイド剤が用いられることがある。そこで進行がんの患者(ステージIIIまたはIV)について、MPA(メチルアセトオキシプレジェステロン酢酸)で治療する患者10症例とEEMで治療する患者11症例を、条件が同じくなるように無作為に分けて治療成績を検討した。
その結果、MPA治療群では臨床的レスポンスは全く見られなかったが、EEM治療群ではPR(部分寛解)が1例確認された。そしてそのレスポンス・レートは9.1%であった。
さらに6ヶ月以上の生存率はMPA治療群では20%(1/5)であったが、EEM治療群では75%(3/4)であり、差が認められた。またQOLを比較すると、EEM治療群では Karnofsky Performance Status Score (KPSS)、食欲増進、体重増加のいずれにおいても、MPA群より優れているという結果を得た。
またEEM治療群では免疫担当細胞の活性化が認められ、T細胞のCD4/CD8比の増大が確認された11)。
さらにEEMと癌化学療法剤との併用に関しても、臨床的に検討した。
同じく進行がん患者を化学療法剤単独治療群(25例、CT群)と化学療法剤とEEMを併用する群(25例、CT-EEM群)とに、無作為に分けて臨床効果を観察した。
その結果CT群ではCR(完全寛解)が1例で、PR(部分寛解)は6例であったが、CT-EEM群では2例にCRが認められ、PRは6例であった。
これはEEMの併用によって、レスポンス・レートが28%から40%にあがったということになる。また6ヶ月以上の生存率は、CT群では56%(14/25)であったのに対して、CT-EEM群では84%(21/25)であり、さらに1年以上の生存率もCT群で20%(5/25)であったが、CT-EEM群では48%(12/25)と生存率が有意にあがることがわかった。
QOLに関しても,CT-EEM群ではKPSSなどの改善が見られたが、CT群ではQOLの改善が見られた症例はなかった13)。
次に一次予防について臨床研究を行った。
中国河北省南部渉県と河南省北部林県は食道がん多発地帯であり、そのことは国際的に有名である。
河北医科大学第四病院(腫瘤医院)では、渉県で食道がんの集団検診を行っている。その中心的指導者である叢教授が我々のEEMRの研究に関心を持たれ、その一次予防に関する臨床研究を行った。
先ず診断の結果、炎症性または修復可能な症例(グレードI)はそのまま様子を見ることにするが、グレードIII以上と診断された場合、患者は治療を受けることになる。その中間のグレードIIと診断された症例、11例にEEMRを6ヶ月服用してもらった。
その結果4例がグレードIIから前がん病変が消失してグレード0に改善し、グレードIIからグレードIに改善した症例は2例に認められた。その他の症例は判定がやや難しいが、若干の改善が見られたという結果であった。
このように我々の食用キノコの研究から開発されたEEMRは臨床的にも有用であると考えられる1、12、13)。