抗がん剤の現状

がん 治療において、抗がん剤の選択は非常に難しいです。 保険医療で使えるもの、使えないものがあるし、厚生労働省から認可されていないものもありますので、まず

  • 使える抗がん剤をうまく使っていく。
  • 色々使っていく中で効く抗がん剤を探していく。

というのがいいと思います。
個人的には抗がん剤の種類にそんなにこだわらなくていいと思うのです。

また、抗がん剤の種類が変わっても、使う量をうまく考えていかないといけないと思います。抗がん剤が効く、効かないというのは がん 腫の違いだけではなくて、個人差も関係している可能性が大きいのです。

つまり、遺伝子によって副作用が強く出る人や有効性が高く出る人などがいます。
しかし今は、抗がん剤の認可は臓器別の認可になっています。

胃がん にはこの種の抗がん剤、 大腸がん にはこの抗がん剤、 肺がん にはこの抗がん剤というように、臓器別で抗がん剤が決まっていくのです。

おそらくこういう決め方というのは、日本の医療が臓器別になっていて、臓器別にしかデータが出てこない仕組みになっているために、こういう認可になってしまうのだと思われます。
しかし、将来はある遺伝子を持っている人はこういう抗がん剤が副作用も少なく有効性も高いという予測のもとで抗がん剤が選択されるかも知れません。

その人はどういう臓器でどういう がん でもこの抗がん剤が効くというようなオーダーメイド・テーラーメイドの治療法の確立ができるようになるかも知れませんね。

私は、その方が納得できます。

だからおそらくそういうことになれば臓器別に認可するというのは意味の無い話になるかもしれませんね。
しかし、現時点で治療を必要としている がん 患者さんに「5年待って下さい。」なんて言えるわけもありませんので、現時点でできる最良のことを患者さんに提唱する必要があるわけです。

ですから、抗がん剤を色々試してみるのも悪くないと思いますが、これをやると間違いなく死にますよというものは試せない。
今の現状では、抗がん剤は副作用を抑えて使いましょう。と、そういう使い方しか出来ないでしょう。


将来的には、遺伝子の診断で抗がん剤を選ぶという方向性で進んでいると言われています。ただし、その遺伝子のデータの集計に相当時間がかかると思います。 これは、いわゆる がん の遺伝子治療とは違う話です。

がん の遺伝子治療というのはなかなか大変です。異常な遺伝子を正常な遺伝子に置き換えて行く治療法なのですが、それが難しい。 がん 細胞は確かに遺伝子異常といわれています。
しかしそれが規則正しい変化かというとそうではなくて「無茶苦茶」なのですね。

一つの がん の塊で何億もあるような細胞があったとしたら、全細胞の遺伝子異常が違う可能性があるのです。極端な話ですが、 がん の塊から細胞を採取したときに取る場所によって違う遺伝子異常が認められるかも知れません。
それを全部一個一個やっていけばいいかと言うと、1人直すのに「いったい幾らお金がかかるんだ!」という話になります。
がん の遺伝子治療は、非常に効率の悪い治療法になってしまう可能性もあります。

今の現状では、抗がん剤は副作用を抑えて使うしかないように思われます。

「元近畿大学腫瘍免疫研究所 丸山医師」