がん より怖い細菌感染症(院内感染)

がん の手術が終わって「ほっと一安心。」の患者さんとその家族なのですが、その後に気をつけなければならないのは細菌感染症(院内感染)です。

体力や免疫力の下がった患者さんには院内感染、細菌感染症の危険性が常にあります。
手術後にはよく熱が出る患者さんがいます。私の父もそうでした。
発熱が続くと、食事も通らなくなり、だんだん体力が弱ってきます。

特に抵抗力、体力の無いお年寄りや女性、虚弱の人にとっては院内感染や細菌感染症は結構辛いものなのです。

発熱の原因として考えられるのが、肺炎、尿路感染、手術部位の細菌による感染症です。
血液検査の値で白血球(WBC)が上がったり、炎症の数値(CRP)が上がっているとその可能性が高くなります。

どんなに気をつけても、無菌室で無い限り、細菌がいないところはありません。
また、人間自身が細菌と共存していますし、お腹の手術の場合、体内の中に住んでいる大腸菌や嫌気性菌などによって腹膜炎になる可能性も多々あるのです。

とくに大腸 がん や、膀胱 がん などの大腸の周りのリンパ腫なども細菌感染症の危険性が高くなります。
特に外科手術後の体力の落ちた状態では院内感染症の危険度も高くなりますし、自分の体でも臓器によって汚さの度合いが違うのです。

そのため、糞便がだせない腸の手術の場合は非常に危険である意味、そのまま死にいたる可能性が高くなるのです。

常に清潔で、お腹の調子もよく、抵抗力が高くて菌を寄せ付けない人(免疫力が高い人)が、もっとも感染症の危険性が低くなります。

病院側も院内感染対策として院内や手術室、スタッフを消毒し、患者さんに抗生物質を手術前に投与して防ごうとします。しかし完全ということはありえません。

特に手術後の患者さんは手術のストレスによっても、免疫力がかなり落ちますし、さらに がん の患者さんは、さらに がん によって免疫が落ちているので、それが問題になります。

そのため、熱や痛み等が出た場合は がん のせいと思うのではなく、細菌感染症を疑うことも必要です。
がん ではなく、細菌感染症によって亡くなる危険性も高いことを、忘れてはいけません。

病院は医療施設であって、医療のスタッフもいるから安全な場所であると同時に、さまざまな病気を抱えた人の集まる場なので、病原体のたまり場でもあるともいえます。そのため入院期間をできるだけ少なくすることも考えたほうがいいと思います。

覚えておいて欲しい2つのこと

  1. 細菌感染症になるのは病原細菌の数と、その人の免疫力の力関係によるわけです。そのため免疫力が下がれば、少数の細菌の数でも感染する可能性が高いということです。
  2. 最近は抗生物質の効果が出ないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)及びバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の感染症が増えてきたということです。また多剤耐性菌の緑膿菌やセラチア菌感染症が増えてきました。これらは日和見感染として発症します。

細菌感染症で闘病生活を悪化させないようにするためにも、免疫力を高める対策と抗菌対策が必要なのです。